【メイクアップ実習】九島紀子先生にインタビューKushima Noriko

 

メイクアップの教員であり、心理学の博士号もある九島紀子先生にインタビュー。

最後に、入学を考えている方に素晴らしいメッセージがあります。それに至るまでの、九島先生の多彩なご経歴や出会いをお聞きしました。

それでは、九島先生のものがたりを聞いてみましょう。

美容師から学者へ、人生を変えた出会いやきっかけとは?

夢の始まりとキャリアの転換点

  美容師としてキャリアをスタートさせ、その後、ヘアメイクアップアーティスト、そして心理学の学びへと進んでいった私の人生は、偶然から始まり様々な出会いや経験によって大きく形作られてきました。最初のステップは、偶然出会った美容師さんに憧れ、その道を選んだことから始まります。もしその人が異なる職業だったなら、私の人生もまた違った方向に進んでいたかもしれません。

ロンドンのヴィダルサスーンアカデミーの学生時代。九島先生(右)

  私が勤めたサロンは、単なる美容室ではなく、メイクやエステ、スパを含むトータルビューティのサービスを提供する場所でした。そこでメイクに対する興味が芽生え、美容師としての経験を積んだ後、ヘアメイクのスキルをさらに磨くためロンドンへと渡りました。ロンドンではコレクションや雑誌の仕事を通じて、ヘアメイクアップアーティストとしての技術を深めていきました。

 

ロンドンでの出会いと発見

  ロンドンでの生活の中で、自宅を改装して美容サロンのような空間を作り、多くの人々と出会いました。出会い、その関わりの中で美容という職業のユニークさを改めて実感しました。美容の仕事というのは、お客様やモデルさんなどと友人とも家族とも異なる特別な距離感を持っていて、普段は話せないような悩みを打ち明けられる相談者のような関係になっていくんですね。でも、そのような深い会話の中で、私には解決できない問題やメンタル面での支援が必要な場面に直面することもありました。

  この経験は、心理学への関心をより深めることとなり、また社会人が大学へ進学するというイギリスの文化に触れたことが、私が大学で心理学を学び始めるきっかけとなりました。

ヘアメイクアップの先生たちと、ロンドンにて。九島先生(中央)

 

美容と心理学の融合

  美容師からヘアメイクアップアーティスト、さらには心理学の学びへと進むというキャリアは、出会いと興味が重なり合った結果だと思っています。美容と心理学という異なる分野を結びつけることで、人々の内面と外見の両方に対して貢献できるようになっていったと思います。

 

ロンドンでのヘアデザインコンテストにて。ベストカット賞、ベストカラー賞を受賞。

働きながら、大学に行き、修士、博士を取得。大学に入ってからのことを教えてください


社会人からの大学生活とその挑戦

  日本に帰国した後、大学への道を選びました。仕事をしながら大学生生活を送るという2足の草鞋を履くことになりました。


  大学では、特にストレス関連の研究に興味を持ち、卒業論文でもストレスに焦点を当てたテーマを扱いました。また、在学中に出会った知人からの提案を受け、大学卒業と同時にヘアメイクスタジオをオープンさせる機会に恵まれました。こうして、メイク講師としての仕事もスタートさせていくことになりました。

  ヘアメイクなどの職業は「感覚」に大きく依存していて、私自身もその「感覚」に頼ってきました。しかし、メイク講師の仕事をしていく過程で、この感覚の言語化と感覚の裏付けの必要性を痛感しました。そしてメイクと心理学の関連についてもっと深く研究したいと思うようになりました。

研究者としての新たなスタート

  ヘアメイクスタジオの開設から4、5年が経過した頃、私はメイクに関連する心理学を研究すべく、社会心理学系の大学院に進学する決意をしました。仕事をしながらの研究生活は、2年間の修士課程だけでは足りず、さらに博士課程へと進むことにしました。この過程で、最終的には学位論文を提出し、学位を取得するに至りました。

 

メイクアップのおもしろさについて教えてください


メイクアップの力

  メイクアップは、単に外見を変えるものではありません。リップの色一つで人の印象を大きく変えることができるほど、強力なツールです。私は、多くの人がメイクを自己表現の手段として使い、こうなりたいと思うメイクをして、そのように生きてほしいと思います。メイクは、女性だけでなく男性にも、自信を与え、強い味方と考えています。

メイクによる自信の獲得

  高校生をはじめ、多くの人々がメイクを通じて自信を得ていることを目の当たりにしています。自分を少しでも可愛く見せることができると、自信を持つことができます。しかし、自分に自信を持てていない人が非常に多いことも感じています。私は、メイクをすることで、そうした人々が少しでも自信を持つ経験をしてほしいと思っています。

メイクアップ教育の役割

  私たちが提供する大学の教育を通じて、学生たちは他人に自信を与える力を持つ人物へと成長してほしいと考えています。メイクアップというのは、他者を支え、自信を持たせることができる非常に価値のある仕事です。授業では、理論や心理学の基礎を学んだ後、それらに基づいた実技を行うことで、このような力を養っています。

入学を考えている高校生にメッセージをお願いします

  日本で唯一の理論と技術の両方、さらにマネジメントなど幅広く学べるこの大学を知ったときは、本当に羨ましいと感じました。

  技術だけでなく、その理論的な背景を深く理解したい方、または多様な理論を学びたいと考えている方にとって、実技や実務実習を通じて豊富な経験を積むことができるのは、とても魅力的だと思います。

PROFILE

九島紀子 准教授

  • 専門分野:心理学/美容
  • 担当科目:メイクアップ実習Ⅰ/メイクアップ実習Ⅱ/企業実習Ⅲ(メイクサロン実習)/総合演習Ⅰ/総合演習Ⅱ
  • 経歴:美容師歴30年。美容師として初めて心理学博士の学位を取得。そして、美容師として唯一の心理学博士。サロンワークを経て、ロンドンのヴィダル・サスーンアカデミーに留学。その後、ロンドンコレクションやファッション誌など、フリーのヘアメイクとして活動。帰国後ヘアメイクスタジオをオープン。メイクの講師業も始める。大学院にて顔や化粧に関する心理学的研究を行い、その研究成果*と美容業界での長年の現場経験から生み出された、顔・印象理論、メソッドを構築。協会を設立。複数の大学にて化粧心理学等の講義も担当する。*日本応用心理学会 学会賞受賞

 

美と健康の未来を築く 教員インタビュー特別編

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