教育を彩る芸術 〜籔内佐斗司教授の教室から〜Yabuuchi Satoshi

探求と創造の融合:籔内佐斗司教授の世界へようこそ

  ビューティ&ウェルネス専門職大学の副学長であり、彫刻家の籔内佐斗司教授の特別インタビューをお届けします。籔内教授の彫刻作品は、見る角度によって異なる印象を与え、観る者をその物語へと引き込みます。

  このインタビューで、籔内教授は彼の作品背景、東京藝術大学での仏像修復経験、そして教育者としての想いを語ります。

  インタビューの最後に、未来の学生たちへのメッセージも掲載しています。美と健康の未来を形作る本学で、あなたも新たな可能性に挑戦しませんか?

始めに彫刻家である籔内教授の作品についてお伺いします。童子シリーズ、任侠坊、反骨屋あかん兵衛といったユニーク作品群には、どのような歴史的背景や個人的な経験が影響しているのでしょうか?

童子シリーズの背景にあるもの

  私の作品のテーマは、東洋的自然観や仏教的生命観に基づいた日本人の心です。それらを形にしたのが「童子(どうじ)」たちです。生命力の根源である彼らの姿は、頭に一本の小さな角を生やした雷神さまの息子で、はだかん坊か虎の褌を穿いています。

現代科学の用語に置きかえれば、「電子」や「量子」といった存在で、世の中のあらゆる物事や出来事の背後に潜んでいるのです。

  制作技法は、木曽ヒノキの寄木造りに、漆を塗って日本画の顔料で彩色を施すという1000年以上前の伝統的な仏像の造り方を踏襲していて、仏像を主とする文化財修理から学んだものです。


「任侠坊」シリーズの魅力とは

  東映の任侠映画が大好きで、特に高倉健や三島由紀夫の姿が作品のヒントになっています。

「弱きを扶け強きを挫く任侠坊 卑劣なやからや理不尽は 背なかの龍が許さねえ」という詩も作りました。

  とても人気のあるシリーズで、第一作から20年以上経った今でも注文が絶えません。最近では、藤純子をモデルにした「任侠坊」と対になる「緋牡丹小町」も造っています。

 近年、あまり聞かれなくなった義理や人情、仁義、矜持(きょうじ)という日本人の美学を大切にしたいと思っています。

 


反骨屋あかん兵衛の世界

  私は反骨精神と諧謔(かいぎゃく)が旺盛な浪速の生まれですから、立場や権威を笠に着たもの言いや、規則を振りかざす人たちがだいきらいです。「あかん兵衛」は、表向きは服従していても、心の中では、反骨心を燃やしています。そして、作品にはいつも他者への愛情を忘れないようにしています。

「ひょいと頭を下げたなら 繰り言小言も飛んでいく だれがあんたのいいなりに なってやるかの あかん兵衛」


小学生の頃は漫画がお好きだったと伺いました。漫画が籔内教授のアートにどのような影響を与えていますか?具体的な作品名やキャラクター、影響を受けた具体的な例について教えていただけると興味深いです。

 戦後の高度成長期に育った私たちの世代の子ども時代は、少年マンガ雑誌が全盛の頃で、同世代の多くの作家たちはマンガに圧倒的な影響を受けています。

  すでに幼稚園の頃には、「大きくなったら絵描きさんになる」と母に宣言していたそうです。

  小学3年の頃に小児結核を患ったせいで体育は苦手で、そのかわり図画や工作はだれにも負けませんでした。親も先生も、そういう私を優しく見守ってもらえたことに感謝しています。

  70歳を過ぎた現在まで、そのまま大きくなったようなもので、ほかには何の取り柄も趣味もないことが、今となっては寂しい限り。でも、自分がいちばん好きで得意なことだけやってこられたのは幸せなことだったと思いますね。

  特に影響を受けたマンガは、手塚治虫さんの『鉄腕アトム』や『火の鳥』、白土三平さんの『サスケ』など。

 それから小説では、佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』のシリーズは貪り読んだものです。「童子」は、私なりに解釈し直した「コロポックル」というわけです。

 


東京藝術大学で学びながら仏像修復にも携わり、関連する多くの著書を出版されています。仏像修復で特に印象に残っているエピソードや、その経験がどのように籔内教授の人生や教育観に影響を与えているか教えてください。

 

  最も心に残っている仏像修理は、1983年から1985年にかけて取り組んだ奈良市の新薬師寺の「景清(かげきよ)地蔵」です。

六尺あまりの大きな地蔵菩薩で、最初は南北朝期のごく一般的な寄木構造をしているものと思って調査を始めました。ところが、X線撮影をしたところ、なんと図のような前代未聞の二重構造をしていることが判明しました。しかも像内文書から鎌倉時代中期のものであることもわかり、関係者はもとより文化庁の専門官やマスコミまですっ飛んでくる大騒ぎになりました。

 「作業は文化庁で引き継ぐ」という申し入れもありましたが、おりしも研究室の主任教授だった日本画家の平山郁夫先生が「藝大が受託したものですから、このまま続けましょう」という鶴の一声に励まされて修復を開始し、2年後に無事お寺にお納めすることができました。

  このときの「現場の人を尊重し、信頼してまかせる」という平山先生の勇気と英断には、組織を率いる人の矜持を教えられた気がしました。

  このお地蔵様は40年経った現在、重要文化財に指定するための再修理が国宝修理所で行われていると聞いてます。

 その後、1987年に大学を離れてから十数年間は彫刻家として活動を続け、2004年から2010年まで、東京藝術大学大学院文化財保存学教授として、たくさんの優秀な後進を育てることができました。それもひとえに景清地蔵さんと平山郁夫先生のご縁とご恩のおかげだと思っています。

現在は、2023年4月に開学したビューティ&ウェルネス専門職大学で孫のような学生たちと接していますが、彼ら彼女らにも生涯の指針となるような示唆を与えてあげるのが私の仕事だと思っています。

 


「ビューティ&ウェルネス専門職大学の副学長・教授」としての籔内教授に質問です。本学で教えている授業内容とそれが学生の生活観や芸術観にどのように影響を与えているかを教えてください。

 私は、前期開講の「ビューティ&ウェルネス入門」と、後期に開講される「比較芸術論」という選択科目を担当しています。

  日本の美術工芸や仏教美術を入り口として、世界的視野へと展開する古今東西の多くの芸術作品と比較しながら、全ての学問の基底を成す人として知っておくべき教養やLiberal Artsを学んでもらいたいと思っています。

ビューティ&ウェルネスとは、生きることの楽しさを自分の周りの人たちと分かち合い実践することだと気づいてください。

 


ビューティ&ウェルネス専門職大学に入学を考えている将来の学生たちへ、メッセージをお願いします。

 「真(真実か偽物か)善(善いことか悪いことか)美(美しいか醜いか)」というギリシア以来の西洋哲学や、「縁」に集約される仏教思想、「仁義礼智信」という儒教などの東西の人間の根本的価値観を学び、そのうえに全ての学問や技術・芸術が築き上げられていることに気づいてほしいと思います。

そして教養や芸術を学ぶことの楽しさ、またそれを知ったことによる人生の豊かさや自由なこころを実感してもらい、本学で有意義な学園生活を送ってくれることを願っています。

 


籔内佐斗司 副学長・教授 Profile

経歴
東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、同大学院美術研究科修士課程修了(彫刻専攻)

2004〜2021年 東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学講座教授、副学長

日本人の精神世界や宗教観をテーマに「童子」というキャラクターを用いて木彫作品を制作し、国内外で発表する。そして「Art for the Public」として、全国の100箇所以上にブロンズ作品を設置している。「第21回平櫛田中賞」「倉吉緑の彫刻賞」「須磨離宮公園現代彫刻展 兵庫県立近代美術館賞」等受賞。

また仏像を中心とした300点以上の木造文化財の造像技法の研究や修復事業に携わる。

 

主な著書
『壊れた仏像の声を聴く』(角川選書)、『古典彫刻技法大全』(求龍堂)、『ほとけの履歴書』(NHK出版)、『仏像風土記』(大和文庫)、作品集『籔内佐斗司 やまとぢから』ほか

 

 

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