室伏 きみ子【学長/教授】ムロフシ キミコ【学長】
教員
- 担当科目
- ビューティ&ウェルネス入門/生命科学
- 専門分野
- 細胞生物学/生命科学/科学教育
医学博士
お茶の水女子大学名誉教授/前学長
Message
【美と健康を科学的に学ぶ】
学問としてのビューティ&ウェルネスを確立して、優れた専門職業人を育てることを目標に、本学では4つのカリキュラムに力を入れています。1つ目は自然科学、医学、保健衛生学などを幅広く横断的に学ぶ科目群です。これらの科目は、生活や人生の質である「QOL」と関係の深い、体と心の状態とその維持・管理、食事と栄養、運動、化粧品などを科学的に考えるための基盤となります。その上で、想定されるリスクへの対処方法を考え、自分自身の技術の効果を正しく評価することもできます。2つ目は芸術や語学、身体表現などを学ぶ科目群です。人としての素養と美的感覚を醸成し、環境変化への対応力を高めるために、心と身体を解放できる学びの環境を用意しています。3つ目の科目群ではチームで働くためのコミュニケーション力やホスピタリティ精神の実践力を養成し、将来的にビューティ&ウェルネス分野のリーダーとなることを目指します。そして4つ目は600時間の臨地実務実習を設けて、専門的で応用的な実践力を4年かけて着実に身につけるカリキュラムです。充実した実習の経験は、将来に向けて自分自身を創っていく上での自信にもつながると考えています。 さらに研究活動にも力を入れ、現場で実践されている技術には科学的な裏付けがあることを明確化し、世の中に発信していきます。ビューティ&ウェルネスは新しい分野ですから、既存の枠組みに収めようとせず、意欲ある学生たちと一緒に挑戦し、発展させていきたいと考えています。
【花が咲く日まで飛び続けて】
現代は先の見えない激動の時代ですが、だからこそ自分自身の生き方を真剣に考えることが大切です。この先どのような場面に遭遇しても、きちんとした技術や科学的な思考力があれば、自分を見失うことはないでしょう。ぜひ自分自身の力を見極めて伸ばしていってください。また、挑戦し続けることも大切だと思います。挑戦して失敗しても、それを糧として強くなることが出来ますし、他人に対してもやさしくなれるはずです。思う様にいかない時は、低空飛行でも構わないので、着地してしまわずに飛び続けていてください。そうすれば、いつかきっと高く飛ぶことができて、花咲く日が来ると信じています。
「生命科学」では、あなたが今ここにいることが、とてつもない奇跡であることを学びます。そのことを折に触れて思い起こしてください。過去に存在した多くの命があるからこそ、私たちは生きています。あなたの命は、ひとりだけのものではないことを忘れずに、自分自身を大切にして、夢の実現に向けて努力して頂きたいと願っています。
プロフィール
- 経歴
経歴
お茶の水女子大学理学部生物学科を卒業後、同大学大学院理学研究科生物学専攻修士課程を修了(理学修士)。その後、東京大学大学院医学系研究科基礎医学(生化学)専攻博士課程を修了し、医学博士を取得。
米国ニューヨーク市公衆衛生研究所(The Public Health Research Institute of The City of New York)にてResearch Associateとして研究に従事した後、お茶の水女子大学に戻り、助手・講師・教授を経て理学部長、理事・副学長を歴任。学長を務め、現在は名誉教授。
この間、フランス・ルイ・パスツール大学(現・ストラスブール大学)客員教授も務め、同大学から名誉博士号を授与される。
さらに、日本学術会議会員、日本医療研究開発機構(AMED)監事、内閣府男女共同参画会議議員・同推進連携会議議長、文部科学省や経済産業省の各種審議会委員を歴任。NHK経営委員・監査委員(名誉会友)、国立大学協会理事・副会長も務めるなど、幅広く活動。
また、(株)ブリヂストン社外取締役やTSUBASAファーマ(株)取締役として産業界にも貢献している。
- 研究活動・社会活動
研究活動・社会活動
これまで、学会や財団などを通じて若手研究者の育成に力を注ぎながら、自らの研究活動も進めてきました。近年は研究に十分な時間を割くことが難しい状況にありますが、今後は工夫を重ねて研究の時間を増やしていきたいと考えています。研究内容の詳細については、次の項目をご参照ください。
また、私自身が直接参加する機会は減っているものの、学生や社会人とともにボランティア活動「夢のつばさプロジェクト」に関わり続けています(詳細は以下URLをご覧ください)。
https://www.npo-ochanomizu.org/tsubasa/
【主な所属学会・団体等】
- 人間情報学会 会長
- 日本科学教育学会 顧問
- NPO法人 遺伝カウンセリング・ジャパン 理事長
- 三菱財団 理事
- 国際科学振興財団 評議員
- 日本国際教育支援協会 評議員
- 教育内容・研究内容
教育内容・研究内容
なぜ「生命科学」を学ぶのか?
20世紀後半から、「生命科学」の発展に伴い、包括的な学問としての「生命科学」を学ぶことの重要性が認識されてきました。今世紀に入ってからはさらに期待が大きくなり、「21世紀は生命科学の時代」とまで言われるようになりました。
生命科学は、私たちの身近な課題から地球規模の環境問題まで広い分野を含む学問領域ですが、特に医療を通して私たちの生活に密接に結びついています。例えば、ウイルスや細菌による感染症や生活習慣病、認知症などの研究や治療を通して、私たちの命を守るために多くの有用な成果が生み出されてきました。
ウイルス感染症としては、現在世界中の人々が苦しんでいる新型コロナウイルス、毎年多くの患者を出すインフルエンザウイルス、妊婦が感染すると赤ちゃんが小頭症になる可能性があるとして近年話題になったジカウイルス、感染力の強いノロウイルス、肝がんの原因となる肝炎ウイルス、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスなどによるものが広く知られています。
(注)「子宮がん」には「頸がん」と「体がん」があります。「体がん」は女性ホルモン(エストロゲン)のバランスの崩れによって起こるもので、「頸がん」と異なりウイルスは関係しません。生活習慣病には高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などがあります。また、超高齢社会の到来で認知症が大きな社会的問題になっていますが、認知症にはよく知られているアルツハイマー型認知症のほか、レビー小体型認知症、脳血管性認知症があり、それぞれの発症メカニズムや改善・治療に向けた研究が進められています。
一方で、生命科学は地球上の多様な生物と人間との関わり合い、生物と自然との共生、食料・環境問題など、さまざまなテーマを包含しています。
さらに、新しい技術が次々と開発され、ヒトES細胞の樹立やクローン生物の誕生、ヒトゲノムの解読、iPS細胞の医療応用、ゲノム編集などが大きな話題となりました。これらの研究成果は生命科学に大きな転換点をもたらし、人のあり方や倫理問題、生殖医療のあり方、人類の未来への責任といった課題を提起しています。もはや生命科学分野にとどまらず、人文・社会科学や理学・工学を含め、ほぼすべての学問分野を動員して総合的・俯瞰的に判断することが求められる状況になっています。
生命をどのように捉え、生命の尊厳や人のあり方をどう考えていくか。そして将来に向けて、私たち「ヒト」(生物種としての人を示す場合はカタカナで「ヒト」と表記)として、地球に生きる知的生命体の責任をどのように果たすのか。こうした課題に向き合うことが必要です。
「生命科学」を学び、成果を社会に活かす人々や、生命の仕組みを解き明かす研究に従事して成果を応用する人々には、以下のような課題への取り組みが求められます。
- 生物多様性の尊重と維持への努力
- 食料の安全と農業の現在と将来
- 医療のあり方と改善
- 生命科学における基礎研究の維持と多様性の確保
- 生命科学における次世代人材の育成
皆さんには、「生命科学」を学ぶ中で、上記の課題について真剣に考える機会を持っていただきたいと思います。もし興味が湧いてきたなら、生命科学研究に携わってみることも有意義な経験になるでしょう。
なお「生命科学」では、あなたが今ここにいることがとてつもない奇跡であることを学びます。そのことを折に触れて思い起こしてください。過去に存在した多くの命があるからこそ、私たちは生きています。あなたの命はひとりだけのものではないことを忘れずに、自分自身を大切にし、夢の実現に向けて努力していただきたいと願っています。
- 論文発表
論文(代表的論文)
- Endo M, Gotoh M, Nakashima M, Kawamoto Y, Sakai S, Murakami-Murofushi K, Hashimoto K, Miyamoto Y.
“2-Carba cyclic phosphatidic acid regulates blood coagulation and fibrinolysis system for repair after brain injury.”
Brain Res., 2023, 1818, 148511.
PubMed - Takei R, Nakashima M, Gotoh M, Endo M, Hashimoto K, Miyamoto Y, Murakami-Murofushi K.
“2-Carba-cyclic phosphatidic acid modulates astrocyte-to-microglia communication and influences microglial polarization towards an anti-inflammatory phenotype.”
Neurosci Lett., 2023, 797, 137063.
PubMed - Nakashima M, Gotoh M, Hashimoto K, Endo M, Murakami-Murofushi K, Ikeshima-Kataoka H, Miyamoto Y.
“The neuroprotective function of 2-carba-cyclic phosphatidic acid: Implications for tenascin-C via astrocytes in traumatic brain injury.”
J. Neuroimmunol., 2021, 361, 577749.
PubMed - Fukasawa K, Gotoh M, Uwamizu A, Hirokawa T, Ishikawa M, Shimizu Y, Yamamoto S, Iwasa K, Yoshikawa K, Aoki J, Murakami-Murofushi K.
“2-Carba-lysophosphatidic acid is a novel β-lysophosphatidic acid analogue with high potential for receptor activation and autotaxin inhibition.”
Sci Rep., 2021, 11, 17360.
PubMed - Tsukahara T, Sahara Y, Ribeiro N, Tsukahara R, Gotoh M, Sakamoto S, Handa H, Murakami-Murofushi K.
“Adenine nucleotide translocase 2, a putative target protein for 2-carba cyclic phosphatidic acid in microglial cells.”
Cell Signal., 2021, 82, 109951.
PubMed - Hashimoto K, Nakashima M, Hamano A, Gotoh M, Ikeshima-Kataoka H, Murakami-Murofushi K, Miyamoto Y.
“2-carba cyclic phosphatidic acid suppresses inflammation via regulation of microglial polarization in the stab-wounded mouse cerebral cortex.”
Sci Rep., 2018, 8, 9715.
PubMed - Yamamoto S, Yamashina K, Ishikawa M, Gotoh M, Yagishita S, Iwasa K, Maruyama K, Murakami-Murofushi K, Yoshikawa K.
“Protective and therapeutic role of 2-carba-cyclic phosphatidic acid in demyelinating disease.”
J. Neuroinflammation, 2017, 14, 142.
PubMed - Tsukahara T, Tsukahara R, Haniu H, Matsuda Y, Murakami-Murofushi K.
“Cyclic phosphatidic acid inhibits secretion of VEGF from diabetic human coronary artery endothelial cells via PPARγ.”
Mol. Cell. Endocrinol., 2015, 412, 320–329.
PubMed - Morioka T, Miyoshi-Imamura T, Blyth BJ, Kaminishi M, Kokubo T, Nishimura M, Kito S, Tokairin Y, Tani S, Murakami-Murofushi K, Yoshimi N, Shimada Y, Kakinuma S.
“Ionizing radiation, inflammation, and their interactions in colon carcinogenesis in Mlh1-deficient mice.”
Cancer Sci., 2015, 106, 217–226.
PubMed - Gotoh M, Nagano A, Tsukahara R, Murofushi H, Morohoshi T, Otsuka K, Murakami-Murofushi K.
“Cyclic phosphatidic acid relieves osteoarthritis symptoms.”
Mol. Pain., 2014, 10, 52.
PubMed - Uchiyama A, Mukai M, Fujiwara Y, Kobayashi S, Kawai N, Murofushi H, Inoue M, Enoki S, Tanaka Y, Niki T, Kobayashi T, Tigyi G, Murakami-Murofushi K.
“Inhibition of tumor cell migration and metastasis by novel carba-derivatives of cyclic phosphatidic acid.”
Biochim. Biophys. Acta., 2007, 1771, 103–112.
PubMed - Tsuda S, Okudaira S, Moriya-Ito K, Shimamoto C, Tanaka M, Aoki J, Arai H, Murakami-Murofushi K, Kobayashi T.
“Cyclic phosphatidic acid is produced by autotaxin in blood.”
J. Biol. Chem., 2006, 281, 26081–26088.
PubMed - Tsukahara T, Tsukahara R, Fujiwara Y, Yue J, Cheng Y, Guo H, Bolen A, Zhang C, Balazs L, Re F, Du G, Frohman MA, Baker DL, Parrill AL, Uchiyama A, Kobayashi T, Murakami-Murofushi K, Tigyi G.
“Phospholipase D2-dependent inhibition of PPARγ by cyclic phosphatidic acid.”
Mol. Cell., 2010, 39, 421–432.
PubMed - Murakami-Murofushi K, Uchiyama A, Fujiwara Y, Kobayashi T, Kobayashi S, Mukai M, Murofushi H, Tigyi G.
“Biological functions of a novel lipid mediator, cyclic phosphatidic acid.”
Biochim. Biophys. Acta., 2002, 1582, 1–7.
PubMed - Murakami-Murofushi K, Nagano H, Mano Y.
“A cytoplasmic inhibitor of DNA polymerase from the plasmodia of Physarum polycephalum.”
J. Biochem., 1976, 80, 735–741.
PubMed
その他の論文については、以下をご覧ください。
Murakami-Murofushi K – PubMed 論文一覧- Endo M, Gotoh M, Nakashima M, Kawamoto Y, Sakai S, Murakami-Murofushi K, Hashimoto K, Miyamoto Y.
- 著書
著書
単著
- 『絵とき生命科学の知識』 オーム社、1997
- 『ストレスの生物学 ―ストレス応答の分子メカニズムを探る―』 オーム社、2005
- 『こぐま園のプッチー』 しもいまさきえ絵、冨山房インターナショナル、2006
- 『生物はみなきょうだい』 冨山房インターナショナル、2007
- 『プッチーとお友だち』 しもいまさきえ絵、冨山房インターナショナル、2007
- 『フレー! フレー! プッチー』 しもいまさきえ絵、冨山房インターナショナル、2009
- 『図解 生命科学』 オーム社、2009
共著・編著
- (共著)『絵ときバイオテクノロジー用語早わかり』 太田次郎、オーム社、1984
- (共著)『絵とき細胞生物学入門』 太田次郎、オーム社、1987
- (共編)『バイオテクノロジー用語事典』 太田次郎、オーム社、1993
- (共著)『やさしい細胞の科学』 小林哲幸、オーム社、1999
- (編著)『ライフサイエンス入門』 オーム社、2002
- (共著)『今、なぜ、若者の理科離れか ―科学者と社会との対話に向けて―』(学術会議叢書(10)) 北原和夫ほか、日本学術協力財団、2005
- (共著)『研究資金獲得法 ―研究者・技術者・ベンチャー起業家へ』 塩満典子、丸善、2008
- (共監修)『人類遺伝学用語事典』 滝澤公子、オーム社、2008
- (共編著)『サイエンスカフェにようこそ! 科学と社会が出会う場所』1–3 滝澤公子、冨山房インターナショナル、2009–2011
- (共著)『科学を文化に ―サイエンスアゴラ・シンポジウムの記録―』(学術会議叢書(18)) 毛利衛ほか、日本学術協力財団、2011
- (共編著)『サイエンスカフェにようこそ! 科学と社会が出会う場所 ―地震・津波・原発事故・放射線―』 滝澤公子、冨山房インターナショナル、2012
- (共著)『生殖補助医療と法』(学術会議叢書(19)) 水野紀子ほか、日本学術協力財団、2012
- (監修)『ふしぎがいっぱい いのちの図鑑』 PHP研究所、2012
- (編著)『サイエンスカフェにようこそ! 科学と社会が出会う場所』4–5 冨山房インターナショナル、2013–2014
翻訳
- (共訳)Renee R. Alexander, Maria L. Wilkinson, Joan M. Griffiths『基礎生化学の実験法』 オーム社、1986
- (共訳)Robert W. Hay『生体無機化学』 竹内敬人ほか、オーム社、1986
- (共編訳)J. C. Murrell, L. M. Roberts『遺伝子工学の基礎』 オーム社、1990
- (共訳)ペリー・B. ハケット、ジョアキム・W. メッシング、ジェームス・A. フックス『組換えDNA技術 ―Gene操作の心得―』 大久保明美ほか、オーム社、1992
- (共監訳)Michael T. Madigan, John M. Martinko, Jack Parker『Brock微生物学』 関啓子ほか、オーム社、2003